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自然利子率を低下させるマイナス金利政策 翁(2016)

激論 マイナス金利政策 (日本経済研究センター) 第2章

要約

  1. マイナス金利政策導入の背景は自然利子率の世界的低下。
  2. マイナス金利政策には銀行券の壁がある上、QQEとの併存は副作用をもたらす可能性が大きい。
  3. 黒田総裁はサプライズを好むが経済を不安定化させる可能性が大きい。
  4. 長期的に自然利子率を高めることが重要。

 

長期停滞論

自然利子率とは

  • 完全雇用に対応する利子率。
  • 近年、自然利子率の低下が指摘されている。

世界的に見ても、市場実質金利、実質金利はずっと下がってきているわけです。しかし起きているのはデフレです。そうだとすると、これと比較されるべき自然利子率というのはもっと下がっているのではないか、ということになります。

  • 自然利子率より市場実質金利が低ければインフレ的になるが、現実にはデフレになっているので、実質金利の低下よりも大きく自然利子率が低下しているのではないか

なぜ自然利子率は低下しているのか?

1.アルヴィン・ハンセンの指摘

  • 「元祖長期停滞論」
  • イノベーションの枯渇や人口の減少による投資の減少。

2.その他の要因

  • 低い枝の果実は取り尽くされた。
  • 所得の不平等。

 

マイナスの自然利子率と金融政策

クルーグマン提案(Krugman(1998))

  • 実質金利を自然利子率の水準まで押し下げればよい。
  • 名目金利を下げるのは難しいが、予想インフレ率を上げれば実質金利は下がる。
  • マイナスの自然利子率は一時的な現象であるという前提。

サマーズのクルーグマン批判

  • マイナスの自然利子率は一時的な現象ではない。

黒田総裁

自然利子率の低下が金融政策の効果を制約する可能性について否定的。

  • 理由(1)ここ3年間、実質金利の低下が効いていた。
  • 理由(2)日本の技術力や労働者の質は高い。

 

マイナス金利政策

  • 予想インフレ率を上げられないなら名目金利を下げればいい。
  • 長期戦へ対応できる金利政策の回帰という点で評価できる。

銀行券との競合

1.銀行の利鞘縮小

  • 預金金利のマイナス化は困難。
  • 貸出金利や債券利回りが低下すれば、利鞘が縮小し経営が困難になる。

2.銀行券の廃止

  • 社会に深く根付いた決済インフラを廃止するのはデメリットが大きい。

QQEとの相性

  • QQEは当座預金を増やす政策だが、マイナス金利当座預金へのペナルティ。
  • 基礎残高への付利には緩和効果がなく金利政策上の位置付けが曖昧。

国債バブル

  • 値上がり期待だけでファンダメンタルズから乖離する典型的なバブル。
  • 日銀が損失覚悟で国債を買うという予想によるもの。

マイナス金利導入と円高

  • 欧州では自国通貨高を阻止するためにマイナス金利が導入された。
  • 日銀も同様の狙いがあったと思われるがむしろ円高が進んだ。
  • 国債情勢、経常収支、対外関係がアベノミクス開始時とは逆であり、円高圧力があった。

 

サプライズ

  • 2014年の追加緩和と2016年のマイナス金利政策

サプライズの問題点

大きく3つの問題点があり、経済を不安定化させる。

1.説明責任

2.想定外の反応があり得る

  • マイナス金利政策の発表で、銀行株の急落、メガバンクのベア凍結、金庫の需要など、想定外の反応が続いた。

3.期待のエスカレート

  • サプライズは次のサプライズを期待させる。

 

必要な政策はなにか

中央銀行関係者は「金融政策で自然利子率を追いかけるべき(実質金利を下げるべき)」と言わない。

  • 金融政策は短期的な景気安定には意味があるが、長期的には自然利子率を低下させるから。
  • 金融緩和の本質は将来使うお金を前倒しして今使わせることなので、需要を先食いした分、将来の自然利子率は低下する。
  • 自然利子率の底上げが必要。