読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

非伝統的金融政策に限界はあるか、マイナス金利を中心として 伊藤隆敏(2016)

日本経済論 金融政策

激論 マイナス金利政策 (日本経済研究センター)第7章

 

要約

  1. 日銀のマイナス金利政策は銀行界の反発が大きいものの、為替・株価に一定の効果はあった。
  2. ヘリコプターマネーは通貨発行益の先取りに過ぎない。
  3. 財政出動には財政の持続可能性から限界があるため、潜在成長率の向上を目指すべき。

 

QQEの意義

アベノミクスの最初の1年半の間に円レートを1ドル=120円までもっていき、株価は2万円までもっていった。これは華々しい最初の成果になるわけです。

量的緩和(1つ目のQ)の効果

  • 世界金融危機以降、主要先進国がバランスシートを拡大させる中で日銀だけ何もしなかったことが極端な円高を引き起こした。
  • 量的緩和によってこれを巻き戻した。

質的緩和(2つ目のQ)の効果

  • 第一に長期国債を買い満期構成を変えたことで長期金利を直接引き下げた。
  • ETF購入は株価を、REIT購入は不動産価格を押し上げる。

マイナス金利政策の効果

2015年夏あたりから、効果が薄れたのか世界情勢の変化からか、調子が悪くなってきた中で採用された。

1.銀行界の反発

  • イールドカーブがフラット化しさらにマイナスに沈んでいくため、国債運用ができなくなる。
  • 預金金利はマイナスにできないため利鞘が縮小する。

2.日銀の主張・思惑

  • マイナス金利が適用される部分は小さい。
  • 国債運用が難しいなら貸出を増やすなり、株式や外債を買うなりして欲しい。

3.評価

  • 一般的には失敗したとみられている。
  • 伊藤先生は2営業日は効いたが、それ以降はそれを打ち消すような外的要因で円高・株安になったと評価している。

新しいニュースが出て、それが相場を動かす、ということです。新しいニュースが出た効果、その新しいニュースが織り込まれるまでには1日間2日しかかからないのです。それが継続している時期というのは、継続して新しいニュースが出ている時期なのです。したがってマイナス金利をポーンと入れて、それで効果が出たのが2日間というのは当たり前、2日しかもたなかったというのは不思議でも何でもなく、そういうものなのです。

QQEの限界

1.弾の出尽くし

  • 非伝統的金融政策の最新手段であるマイナス金利かま失敗したので、非伝統的金融政策もこれで弾が出尽くしたという議論になる。

2.国債購入の限界

  • すでに30%を買っていて、あと2年ほどで50%になる。
  • 黒田総裁「100%買ったって何の問題もない」。

3.非伝統的金融資産の購入

  • 日銀が池の中のクジラになり官製相場ではないかとの意見があり、国債以外で日銀が買えるような証券化商品は多くない。

もともと反対だった人たちはともかく、サポートしている人たちの中でも不安になっている人が増えてきた、というのが現状であります。

 まだできることはある

「貸出増加を支援するための資金供給」

  • 銀行が貸出を増やしたら、その増やした分は日銀が自動的にその銀行へ低金利で貸し出す。
  • 銀行界も賛成してくれるはず。
  • ECBやBOEもやっている。

 

ヘリコプターマネー

  •  議論のスタートは、「金融政策には限界があるから次は財政政策だ」。
  • 伊藤隆敏先生のヘリコプターマネーは「ゼロクーポンの永久債」。

ゼロクーポンの永久債

  • 日銀の負債になる現金を増やすには、それにあたる資産を与える必要がある。
  • 通常の国債を発行しては財政部門の債務が増えるので、ゼロクーポンで償還されない永久債を渡せばいい。
  • ゼロ金利の永久債だからゼロクーポンの永久債は政府紙幣の発行と同じ。
  • 2003年頃にスティグリッツなどが提案していたものの変形。

ヘリコプターマネーは通貨発行益の先取り

  • 現金の裏にある国債からの金利収入が通貨発行益となっていて、それを財政部門に上納すればヘリコプターマネーとなる。
  • この意味ではすでにヘリコプターマネーの一部は成り立っている。
  • 国債の代わりにゼロクーポン永久債を持つと、通貨発行益がなくなり上納もできない。
  • 政府は将来の上納を前倒しして今もらってしまうだけ。

 

インフレ目標の未達

原油価格の低下

  • 日銀版コアでは約1%まできている。
  • 黒田総裁は原油価格は下げ止まったと見ている。

賃金引き上げの不調

  • 労働市場は逼迫している。
  • 労働市場の逼迫が賃金に反映されてくればインフレ率も上がってくる。

 

潜在成長率について

日本は不況なのか?

  • マイナス成長であっても、潜在成長率からわずか0.5ポイント低いだけ。
  • 潜在成長率が低いことが問題。

どうやって潜在成長率をあげるのか?

  • 潜在成長率低下の大きな原因は労働人口の減少なので、外国人・高齢者・女性の労働参加率をあげる必要がある。
  • 生産性の向上をは特にサービス業で上げられる。